石を求めて 80キロ
信頼しているお寺の住職から、床の間に飾る石を探すことを提案され、その三日後には石探しの旅へ出かけたのである。
いや、正しくは冒険にだった。
住職から提案されたのは、山形県庄内地方にある川の麓にある石。
なぜこの地方なのかと考えたが、、庄内地方には出羽三山があり、僧が修行する場でもある。神秘的な石が見つかるのではないかとワクワクするのであった
ただ、極度の方向音痴な私は、この度には自信がなかったので、地図が読める親しい友人にドライバーを頼むことにした。
そのある川は、加工された川ではないので川原がない。
また渓谷なので、景色を楽しむのには絶景ではあるが、石拾いにはなかなか難しい場所である。
地元の人に川の麓まで行ける道を尋ねたが、誰もが「あそこには行けないよ」と口を揃えて言う。
でも、そこで諦める私ではない。
その川に沿って走っている道を、一つ一つ潰していくことにした。
カーナビや Google Map を当てにせず、目の前にある小道をただ走らせる。
全く知らない集落に入り、地元の人しか使わないような小道を、ゆっくりと進みながら川に行き着く道を探し続ける。予想以上に根気のいる作業だった。
調子良く小道を走れていたが、途中から人が全く通っていない道に変容し、草木が背丈まで伸びている道になったり、お地蔵様がたくさん並んでいる集落に行き着いたり、改装したての神社や鍵がかかった古い神楽など、もうここまで来ると旅ではなく冒険をしている気持ちになっていった。
そして、冒険から3時間後、ようやく石が拾えるような場所と遭遇することがで。た。
そこは、小さな滝があり、なんとも神秘的な雰囲気だった
その昔、ここは田畑に水がなかなか引けない土地だったらしく、政府の許可を得て水を引いたとの案内板を見つける。人工的な滝であるが、いまは神秘と化している。
石を拾える場所が見つかれば、あとは自分のインスピレーションに叶った石と出会うだけ。
友人も一緒に探してくれて、お互いに気になった石を一箇所に集め出した。
その中で私が惹かれたのはこれ。
水に濡れてる時は赤茶色だったが乾かしてみるとピンク色に変わった。
これに寺の住職から芯(新)を入れてもらった。
この状態だとただの石なので、入魂の儀によって仏様がおかかりしやすくする。
仏様がわかりやすくする目印をつける、それは現代風にいうと携帯電話の位置情報をつけるようなものだ。
イメージは京都の竜安寺の石庭。床の間に飾るために、大きな皿と白石を買ってきて、ピンク色になった石を飾ってみる。
それを見た友人が「これ何かに似てねー?あっ、ローストビーフとご飯だ!!」
「えー似てないよ! でも、このツヤがローストビーフに似ている…。」
1日かけて探してきた石が、ローストビーフに似ていようが、まずは一宇ヨガのアイコンとして活躍してもらうのであった。